曖昧

僕の心を
君は　知らない
　
君の心を
僕は　知らない
　
それがいいんだ
それでいいんだ

手 と 手

君は
生まれて初めて
僕に　手を差し伸べて
　
僕は
生まれて初めて
君に　手を差し出した

リストカット と 猫 と 爪切り

猫　を　飼ってから
リストカット　の　割合　が　減った
そんなわたしは
とても
狡い
　
そんなこと　を
考えながら
その　細い爪　を　
ぱちん　と　切った

むちことば

誰も　そこ　まで　追い詰めないのに
誰も　そこ　まで　追い詰めないから
あなた　は　あなた　を　追い詰めるのね
　
ギリギリ　の　ところ　に　立って
闇の底　から　吹き上げる
風　に　背中　を　撫でられて
自分　は　「そこ」　まで　行っていない　と
自分　を　哀れみ　慰めて
そうして　少し　安堵して
　
　
　
誰も　そこ　まで　追い詰めないのに
　
あなた　に　伸びる　救い　の　その手　を
拒絶　の　手　だと　思っているのね
　
あなた　に　伸びる　救い　の　その手　を
拒絶　の　手　だと　思いたいのね
　
　
　
だけど　わたし　は　知ってるわ
あなた　が　心　の　片隅　で
いつか　その手　が　なくなること　を
何より恐れていること　を

だから　あなた　は　行かないんだわ
その　暗闇　の　奥底　へ
手を伸ばす人　が　待つ　場所　へ
　
だって　
手の届かないところ　に　いる　人　と
手の届くところ　に　いる　人　に
人　は　手を伸ばさないものね
　
それを知ってる　あなたは　いつも
そうして　線の上　を　歩くの
そうでしょう？
　
　
　
いつまで　そうしているつもり？

蜘蛛 の 糸

いっそ　全部から　否定されれば
こんな命　手放せる　？
　
　
　
お生憎様
世の中　そんなに
やさしくないのよ

甘い 暗い

だめだよ
そっち　へ　行かないで

５カウント

例えば
あなたの鼓動　が　尽きるまで
あと　５カウント

１
　
　　２
　　
　　　　　３　
　
　　　　　　　　４　



ほら　もうひとつ
どうして
握りしめているの

哀

かわいそう
かわいそう　に　なりたいあなた　が
だれより　いちばん
かわいそうだわ
　
しあわせ　って
そんなにも　みえないものなのね

空虚

僕の空　に
君　は　もう　いない

いない　はず　なのに
　なぜ
　　　僕　は
こんなにも

侵

腹の奥に溜まった
この　どす黒いどろどろ　を
気持ち悪い　と　さえ
思わなくなった　のは

いつからだろう

何だか
いつの間にか
僕は
　　もう